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5/23/2023

Where to buy, who to meet. -1

 




昨年の冬から約4ヶ月ぶりのイギリス。
まだ寒さが残る3/15-4/12。

鼻を裏返してブラシで洗いたい程敏感な花粉や
黄砂から逃げるように、
買い付けに行って来ました。

欲しいシーズンは春夏および初秋の服。
今回はイギリスのみに絞り、約1ヶ月の長期滞在。


さて、肝心の狙うべき買い付け内容はというと、

前回のブログにも記したような感じ。

さらにリサーチの内容と個人的な気分がリンクしていて、

割と欲しいイメージやターゲットが明確に見えてはいた。


しかし、見えていたところで、自分が探す洋服がどこにあるかは分からない。というのも、ミリタリー、ワークなどいわゆるクラシックなユーティリティウェアは、アメリカ同様に、インターネットがない時代に、先人達(リスペクト)が切り開き積み上げた実績により文化として形成され、また世界的にも大きな市場や概念が出来上がっている。


一方で、イギリスにおいて、80-90年代、とくに最近探している90年代の洋服にはまだ明確な市場が無い。無いが故に、例えば大きなマーケットに行ったところで、まとまって出て来る事はほぼないし、そこが専門のディーラーも知る限りいない。

自分が探す洋服はどこにあるかわからないのは、これが理由。


人それぞれ、バイヤーそれぞれに探す洋服が違うから、方法や場所、視点も違う。

だからこそ、そこが魅力でもあります。





特に自分は買い付けが上手いとは全く思ってないから、持ってる人をひたすら探しながら、毎日莫大な数の洋服を見る。すなわち動きに無駄が多い。ストーリーではDAY1からピンポイントで最終日まで上げましたが、ひたすらそんな感じ。


そんな中、今回は滅多にない出会いをいくつか経験し、そこからの紹介という

数珠繋ぎで、以前からイメージしていたような内容の

架空の誰かのワードローブにリアルに直結するという

貴重な体験があったので記しておきます。


とあるマーケットでの事。よくある内容ごちゃ混ぜで売ってるブースにて気になるものをいくつか売っていた。彼と話すとなんか気になるなといった印象。一応連絡先を渡した。

まあでも大体の場合、予想は外れ、当時の服は無いか、捨てたか、連絡が無いか。9割コレ。


が、今回は違った。


新規開拓で大失敗した水曜日の夕方、

先日の紳士から連絡あり。

「好きそうな服を用意したから見にこない?19時からKnightsbridge でコンサートだから、

それまでなら良いよ。」と。

聞けば紳士の家は、自分の宿の隣町。

そそくさとバスに乗り、期待と不安で妙な表情のまま外の景色を見る。

自然と期待してないような気持ちに持っていく自分に気付く。

それだけ、今だに仕入れで滑る事は精神的にダメージを喰らう。

ただ彼の「Knightsbridgeでコンサート」というキーワードから

膨らむイメージは全く悪い物ではない。





紳士の家は赤いドアが特徴的なクラシックなイギリス住宅。

笑顔で出迎えてくれた。

部屋に入ると、ピュアなラベンダーの香りが立ち込めていて、

モダンなインテリアやその配置、

ダウンライトから一切疑いようのない彼独自のエッセンスが詰まっていた。







挨拶もそこそこに、

焦りと興奮による変な挙動を隠しながら用意されたラックをゆっくり見ていく。

あれ?なんやこれ。なんか凄い内容と量.....

迷う余地はなく全て買った。




少しリラックスして色々と話を聞くと、1980年代から2000年代まで、

良い時代のJOSEPHでセールスマネージャーをしていたと教えてくれた。

彼が素性をマーケットで教えてくれなかった事に疑問を持ったが、

今となっては、何か試されたような気がしてならない。

当時のJOSEPHはまだセレクトもしていたから彼の洋服は

魅力的な当時のデザイナーズウェアも混在。

特に今回、自分はハンドニットではないJOSEPHの古いメンズラインの

布帛も探していたから

まさに狙っていたものが目の前にある状況。


彼自身の洋服、さらに99年に別れた彼の元彼の洋服。

当時の思い出を聞きながら、こちらからも質問などして時間は過ぎた。


実際、纏うのは洋服だけでは無い。

また洋服だけ買い、物だけ持って帰る訳ではない。

こんなクイックな時代に、

わざわざワンクリックで買えないものを探しに来ている。


海外まではるばる何をしに来てるかという事を

改めて再確認した。


帰り際、「そういえば、ハービーニコルズとセルフリッジで働いていた知り合いと、Nicole 

Farhiのセールスマネージャーだった知り合いがいるから紹介するよ」と。

予想していない展開に、顔が何故か赤くなるのが分かった。


実際こういった出会いはかなり貴重で、当時のシーンの話や、

個人のパーソナルストーリーやワードローブを直接見れる事は滅多にない。

インテリアやその時の匂い、音、話し方、洋服、架空ではなく

実在する個人のリアルなパーソナリティ。

それら全てに現代では味わい難い未体験のムードが残っているから、余す所なく体験する。



この '未体験の体験' は次の買い付けでも、もう少し続きそうです。


後半に続く。