ロンドンから8時間
エディンバラから電車で1時間、
さらに車で40分
燻されたクルミの様な
皮革独特の香りが立ち込めるT5で
最寄駅まで迎えに来てくれた
辿々しい会話をしながら、
割と訪れる空白の時間は
スコットランドの大自然を見ているそぶりで
なんとなく誤魔化したりした
まもなくスタジオに到着
5G、いや4Gすらも圏外のエリアにあった
「自宅件アトリエなのよ、さあどうぞ」
10坪ほどの空間には、ミシンというより産業機械といった方が相応しいような、
インダストリアルでクラシックなミシンが自らの役割ごとに配置され、
一目でどこに何があるかわかるように、視界を遮ぎるものがないレイアウトにしてある
祖父が創業したレザーグッズ、
主に馬具製作のスタジオで
彼女で3代目になると教えてくれた
スコットランドは、例えばハイランドゲームスに代表されるバグパイプ、
スコティッシュキルトやギリーシューズなどの様に、
自国の文化的、歴史的要素(土着)が色濃く残っている
一般的な洋服の歴史からみてもユーティリティウェアを含め特有の濃度があり、
このスタジオの佇まいや雰囲気からもすぐにその要素は感じ取れた
こちらの持ち込みのデザインを
縫ってくれるかどうかまだわからないので、
紅茶を飲みながら、
まず彼女デザインのクラシックな
ショルダーバッグのオーダーから話を進めた
基本的にパーツも
UKの物を使う様にしているらしく、
至る所に経年でナチュラルにヴィンテージと化したパーツが転がっていた
彼女が作っている既存のレザーバッグから
1つをピックアップし、そのままのサイズをS、
サイズを大きく変更した物をLとした
各パーツに厚みを持たせ、
レイアウトバランスを圧縮し、
レザーは好きなものを選ばせてくれた
こちらのリクエストを聞きながら
受け答えする様子を見て、
割と柔軟な女性だなと感じた
ならばと、
こちらの持ち込みのデザインの話に入った
続く